Vtube用アバターのキャラデザ依頼で考えていること

この記事では私が(特にVtuber様向けの)キャラクターデザインを依頼された場合の、ご依頼確定から納品までの流れをざっくり説明したいと思います。

キャラクターデザインはお客様の頭の中にあるなんとなくのデザインを形にする作業ですから、
「ご依頼時点では、お客様自身何が欲しいのかがわからない部分がある」
という特徴を持っている商品です。

そんな状態で高いお金をお支払いいただいて依頼していただくわけですから、単純な絵の巧拙や雰囲気だけでなく
「製造過程」を明らかにして安心材料にしていただければと考えた次第です。

また、本記事では解説の具体的な事例として、DJ活動のイメージキャラクター作成をご依頼頂いたElectric dusk様の事例を取り上げます。

こちらの事例では、

  • 職業:DJの女性
  • モチーフ:カーレース・モータースポーツ
  • 色合い:青~紫

という3つの要素を軸として、キャラクターデザインのご要望をいただきました。
(Vtuberの制作事例ではないのですが、一番説明がしやすそうな案件だったため、ご依頼者様に許諾をいただき事例として紹介しております。)

制作の大まかな流れ


キャラクターデザインの流れとしては、大きく下記の5つのステップを踏むこととなります。

  • STEP1 初回ヒアリング
  • STEP2 コンセプト案&デザイン案作成
  • STEP3 コンセプト開発&デザイン案決定
  • STEP4 三面図・立ち絵の作成 納品

以下、それぞれのSTEPでクライアントとクリエイターがそれぞれ何を行うのかなどについて、その段取りを説明していきます。

STEP1 初回ヒアリング

ご依頼メールを頂いた時点や、お見積りなどを制作してご案内する時点でもある程度のヒアリングは行いますが、ご依頼確定までのヒアリングは基本的に「見込み工数とフィーと納期の都合がつくか?」という商売上の取り決めが大部分となります。
よって、Vtuberとしての活動やデザイン自体に関するこだわりなどへのヒアリングについては、ご依頼が確定した段階から行うこととなります。

Vtube用アバターのキャラデザを行うにあたって、筆者がクライアント様に確認したい項目としては、大きく下記の3つに分類できます。

  • 1-1:アバターのデザイン・ビジュアルに関して
  • 1-2:クライアント様自身の経歴やルーツについて
  • 1-3:デビュー後の活動方針や目標に関して

1-1:アバターのデザインに関して

クライアント様が身にまとうアバターそのものについての、髪型や顔立ちや衣装に関する、いわゆる「キャラデザ」そのものに関するご要望、ヒアリングの核となる項目です。

もう少し具体例を出せば、下記のようなものが挙げられます。

  • 身体的属性:体格・年齢層・性別・種族・肌の色・胸の大きさ
  • 性格的属性:大人しい・活発・高飛車・寂しがりや(及びそれにまつわる、顔つき・目つき・口の形・髪型など)
  • 社会的属性:キャラクターの世界観や職業・肩書にまつわる設定(学生・アイドル・女教師・軍人・錬金術師)
  • 象徴的属性:「金木犀をモチーフにしたアイドルキャラ」のように、上記どれにも属さないがキャラクターの印象や方向性に一貫性をもたせるために設定する、アイコニックな要素

その他、お気に入りのファッションブランドや理想としている有名配信者・タレント、キャラデザが好きな既存IPキャラクター、クライアント様自身の方でご用意頂いたラフや設定がなどがあれば、それらもこのタイミングでお受け取りします。

ちなみに、この4つの属性の中で優先順位はあるでしょうか?
筆者の場合は大抵の場合キャラクターの「社会的属性=職業や肩書」に該当する指定を軸に、デザインスケッチを進めるようにしています。

まず、身長・体格・性別・種族・肌の色・胸の大きさといった「身体的属性」については、クライアント様本人、すなわち「中の人」自身のアイデンティティや特性にかなり密接に関わる属性です。
そのため、デザイナー側から意外性のある提案が飛び出したり、プロジェクトを進める途中で大きく方針が変わるということが発生しにくい属性です。
(「当初は20代後半のお姉さんキャラでデビューするつもりだったが、数回の打ち合わせを経てやっぱりロリキャラでデビューする」みたいな変更はまずありません)

次に、顔つき・目つき・口の形・髪型、あるいはそれらによって表現される大人しい・活発・高飛車・寂しがりやといった「性格的属性」についても、大まかな方向性は配信者様自身の中で固まっていることがほとんどです。
また、後々からの変更が効きやすいため、これもキャラクターデザインの中盤~終盤で決定しています。
(当初は気弱なお姉さんキャラで行くつもりだったが、ミーティングを重ねた結果ダウナーなお姉さんキャラに変更になったとしても、デザイン的な修正は限定的です。)

これに対し、学生・アイドル・女教師・軍人・錬金術師といった、キャラクターの世界観や職業・肩書にまつわる指定については、ズバリそのキャラクターの服飾類全般の選定にダイレクトに影響することから、一度決定してしまうとあとからの変更が効かない要素と捉えています。
例えば、もし万一キャラデザが8割進んでいた状況で「ところで自分マジックが一番の趣味なんですよ。このキャラクターにマジシャンっていう属性を追加することできますか?」といったちゃぶ台返しが発生すると、僕の場合デザイン業務はほとんど0からの再出発になるといっても過言ではありません。
あるいはキャラクターの性格やモチーフのみが決まっており、「そのVtuberの世界観において配信者はどのような位置づけなのか?」という情報が無い発注を頂いた場合、ほとんど確実に「このキャラクターはどんな職業のキャラクターを想定していますか?」という点をヒアリングしています。

以上の観点から、少なくとも筆者はキャラクターデザインを考えるときは、優先的にそのキャラクターの職業や肩書を軸にデザイン作業を進めていきます。
(このあたりは人によって固有の順番があるかと思います。)

1-2:クライアント様の経歴・実績・活動開始のルーツ

次にヒアリングでぜひ聞きたい要素としては、キャラクターの側についての話というよりは、配信者となるあなた自身のパーソナリティに関わる部分だったりします。

特に、すでに声に関する活動をされている方については、音声配信でも歌ってみたでも同人音声作品でもいいので、ぜひ事前に声を聞ける環境を用意しておいてほしかったりします。
あるいはVtuberデビューを考える方の中には、すでにSNSやブログなどのメディアで発信を行っていたり、従来からの趣味や活動の延長としてVtuberを始める方、顔も声も出さずに行っていた活動から心機一転してVtuberとして活動をリスタートする方などもいらっしゃいます。
そういった、実績や積み重ねがある状態でアバター制作のご依頼をいただく場合、打ち合わせの段階で各種SNSやメディア、ウェブサイトのリンクなどからその活動の状況を共有していただく場合があります。

これについては、その人の声、話し方、趣味関心、人となりといった部分をあらかじめ把握することで、アバターと配信者様御本人のイメージの乖離をなるべく防ぐことが目的です。
わかり易い例で言えば、「依頼文から大人っぽい印象を受けていたから大人びた顔つきで納品したけど、声自体は結構幼い喋り方だった」のような自体を防ぐことが目的です。

また、クライアント様の来歴をある程度把握することは、下記1-3の「活動の方針や目標」を知るうえでも重要な手がかりになります。
そのため、Vtuberデビュー前に行ってきた活動については、可能な限りイラストレーター側に共有していただけると嬉しいです。

逆にいえば、これまでネット上の活動を一切活動したことがない人が、いきなりVtuberというマルチ性の高い活動を開始することは、個人的にはあまりおすすめできません。
Twitter・ブログ執筆・切り抜き動画制作・音声配信など、より参入ハードルが低く初期コストが低いコンテンツ制作活動から始め、徐々に活動の幅を広げる戦略を強くおすすめします。

1-3:活動の方針や目標

「そもそも、なんのためにVtuber始めたいの?」「Vtuberデビューに際して、目指す目標や方針はありますか?」
などという問いは、なんか採用面接みたいで緊張感が走るというか、クライアント様からするとあまりうれしくない部類の質問可と思います。
ただVtuberのキャラデザを行うにあたり、これからとりあげる1-2や1-3に取り上げるような「クライアント様自身に関する情報」のほうが、1-1にあるような具体的なご要望と同じくらい重要であると、個人的には考えています。

「Vtuberを始める理由なんて、キャラデザに関係あるの?」と感じる方も多いと思います。
しかし、Vtuberというのはあくまで道具であり武器であり、極端なことを言えば何かしらの目的を達成するための手段でしか無いわけです。
その道具や武器を制作してご提供するクリエイターとしては、「この道具・武器を使ってどんな障害を乗り越えたいのか?」という部分については、前提としてぜひとも聞いておきたい要素だったりします。

もちろん、Vtuberになるということ自体が目的化することも、否定されるようなことではありません。ファッションの世界では一着数十万する服を自己満足として着ることだって別におかしいことでは無いように、「自分の思い描くVtuberのアバターを手に入れる」事自体がゴールとなってもいいと思います。

前提として、筆者は基本的に「Vtuberデビューとは変身願望である」という考えを持っています。
実社会の生活に満足している人は、普通Vtuberになりたいとは考えません。それが経済的不満なのか、承認欲求的不満なのか、自己追求的不満なのかはわかりませんが、何かしらの解決したい課題があるからこそ、安くはないお金を用意してVtuberデビューを目指しているのだと思います。

しかし、こういった深い部分にある願望やあこがれについては、意外と依頼文や発注書には書かれていないものです。
一つは上述のようなキャラクターの姿形にまつわる要望の説明に意識が偏ってしまうから、というのはあると思います。
がもっと根本的な理由として、「Vtuberを始める理由」というものは、その人のコンプレックスやアイデンティティにまつわるデリケートな部分であり、それを絵師に説明するのは気が引けるからというのもあるでしょう。

そんなわけで、「Vtuberを始める理由」「Vtuberとして目指す目標」という質問については、クライアント様との信頼関係ができない限りはなかなかしづらいデリケートな部分ではあるものの、ぜひとも言語化しておいてほしい要素だったりします。
というか、ここの軸がしっかりしていないVtuber様のキャラデザは、拠り所がなさすぎてめちゃくちゃやりにくかったりします。

STEP2 コンセプト案&デザイン案作成

STEP1のような形でクライアント様からのご要望をお受け取りしたあとは、早速デザイン作業へと移り変わります。

デザイン業務は主に、下記の流れをとります。

  • 2-1 基礎調査・情報収集
  • 2-2 たたき台デザインの作成
  • 2-3 デザイン案の展開

2-1 基礎調査・情報収集

プロジェクトの最初は、基本的に情報収集です。

基本的には、デザインに必要となりそうな先行事例や要望から連想されるモチーフ・パーツの画像を収集するなどして、デザインに必要な情報を徹底的にリサーチします。
また、上記のようにモチーフからの発送を展開していくのとは別に、クライアント様の過去の活動やすでに公開されているお声やSNS上の発言から読み取れる人となりなども、ある種の資料といえるでしょう。

媒体としては、ネット上の情報(pixiv・Pinterest・Wikipedia)やアート・デザイン系の画集・作品集・写真集に目を通すのはもちろんですが、なるべく歴史・自然科学・料理・建築・服飾など他ジャンルの資料集・雑誌・専門書についても視野を広げ、必要に応じて購入するようにしています。

これらに加え、先行事例の調査も可能な範囲で行います。
例えば女騎士のキャラデザ依頼をお受けしたならば、まずは既存IPでの有名な女騎士キャラのデザインを収集しますし、数学系の学術系Vtuberのキャラデザ案件であれば、すでに活動している理数系学術系Vtuberの先行事例を調査します。
もちろんこれを厳密かつ網羅的に行おうと思えば時間がいくらあっても足りないので、程々の調査で切り上げることにはなります。

いずれにせよこのフェーズでは、「デザインのアイデアを考える」というよりは、考えられるデザインの可能性を限定せず視野を持つことを目指したり、どんなデザイン要素を持つとどんな印象のキャラクターになるのかを考えるなど、デザインにおけるコンサル調査のようなイメージで動きます。

2-2 たたき台デザインの作成

前述の資料をベースとしながら、思いつく限りのアイデアを出していきます。
ここでは、「斬新なアイデア」「耳目を引く工夫」「複雑なデザイン」などをいきなり目指すのではなく、「要望に対してシンプルに応えた、シンプルな案」をとにかくたくさん出していくイメージです。

具体的には、

  • 複数のモチーフやコンセプトを、いきなり同時に表現しようとしない。
  • 「視聴者の記憶に残る」・「クライアントの強みを活かす」・「自分らしいデザインを表現する」などの高次元なデザイン課題は一旦無視する。
  • 「新しいアイデアを生み出す」のではなく、業界の「先行事例研究」や「市場調査」をするコンサルのようなつもりで、立ち絵のスケッチを行う。

など、ということを重視しています。

具体的な制作事例も紹介しておきましょう。
下記に示す事例、DJ活動のイメージキャラクター作成をご依頼頂いたElectric dusk様からの案件では、

  • DJっぽい衣装ってどんなものがあるだろう?
  • モータースポーツっぽい衣装やデザインは、どんなものがあるだろう?

という点を考えリストにまとめつつ、一つ一つスケッチして並べていくということを行いました。

この時点では、立ち絵としてのかっこよさやキャラクターとしての魅力を高めることよりも、
「どのような特徴を有していれば、人間はこのキャラクターを『DJの女性である』『レース関連のキャラである』と認識しできるのか?」
ということを研究し、特徴的なパーツや要素を形にしていくことに重きを置いていました。

まずは「王道・定番」を考える


なぜ筆者は、このような回りくどい具体作業を行うのでしょうか。

第一に、「クライアントの要望を、冷静に、客観的に見る」ためです。
ほとんどのイラストレーターは、「こだわり」や「個性」を持っていますが、それらは言い換えれば自分自身の画風や描くモチーフに何らかの価値観における「癖」「ズレ」「偏り」によって生じているケースがほとんどです。これら価値観の偏りはイラストレータの武器でもあるのですが、悪い方向に作用すると、「クライアントの要望を、自分の好みや好きなジャンルにおける概念」に寄せたりずらしたり曲解してしまう方向に働くことがあります。

例えば筆者の場合、作風の方針や活動の全体的なコンセプトとして「都会的」「大人っぽい」「ファッション誌ライク」などの要素を重視しています。そのため、イラストを作成する際には「イラストをちょっとおしゃれなテイストにする」方向への無意識の引力が発生します。
そんなわけで、僕が「女騎士」を手癖で描いた場合、必然的にちょっとだけモードファッションっぽいデザインになりがちです。戦略的にそういうデザインにしたい場合はいいかもしれませんが、顧客が望んでいない量のおしゃれ要素を盛り込んでしまうと「なんか鼻持ちならないデザイン」という形で、悪い評価に結びつきかねません。

あるいはそこまでいかずとも、発注書にある言葉をクライアントとクリエイターで別々のニュアンスで受け取ってしまうこともあるかもしれません。
例えば上記の例で言えば「生真面目」という言葉で言えば、クリエイター側は「武闘家や剣術家など、道を極める者が持つストイックな生真面目さ」と解釈して作成していたけれども、クライアントは「眼鏡で三つ編みの風紀委員少女的な生真面目さ」を想定して発注していた、というケースです。この手の齟齬はイラスト業界に限らないあるあるな事象かとは思いますが、クリエイター側が一度「生真面目なキャラって、どんなキャラがあるだろう?」と立ち止まって冷静に分析していれば、ある程度は発生を防ぐことができるはずです。

こうしたクリエイター側の無意識的なデザインの歪みや、クライアント側がうまく言語化しきれていなかったイメージとのズレなどを、少しでも是正するための基準値を設定する手法として、「まずは王道を描く」という手法は非常に重要となってきます。

また、第二の理由として「結局定番が一番売れる」という問題があります。
クライアントもクリエイターも、何かと「斬新で目新しい新規性のある独自のキャラクターデザイン」を追い求めてしまいがちなのですが、現実的には「定番のデザイン」には定番として受け継がれてくるだけの理由があるものであり、一見オリジナリティあふれる最先端の人気キャラクターであったとしても、よくよくデザイン要素を分析してみれば「定番デザイン」の集合体であるというケースがほとんどなのです。

で、こういった「目新しいデザインを求めるあまり質的に劣化する」ことを防ぐ意味でも、「ド定番」を最初にイメージしておくことは効果的です。
斬新なデザインというものは、それを思いついた当初は「やべぇ、俺って天才かも」という高揚感でいっぱいになれるのですが、一晩経ってからそのオリジナルのデザインを定番とされるデザインの横に並べてみると、「あれ、なんか違うなぁ」と冷静に自分のアイデアを評価できるようになれるでしょう。

あと、これは結構あるあるなのですが
「要素Aと要素Bをかけ合わせた、斬新なデザインのキャラデザを作ってください!」
という要望だったはずのプロジェクトが、いざ要素Aだけに特化した定番デザインを眼の前に出されると
「やっぱ要素Bは邪魔ですね。コンセプトがブレるだけなので、要素Aだけで進めましょう」
という結論になることが、しばし発生します。
(そしてこれは、必ずしもマイナスな出来事というわけではありません)

世に出回っているほとんどの「いいキャラデザ」というものは、

  • 「ド定番のキャラデザ」に、+αで少しの工夫
  • 「ド定番」×「ド定番」という、王道デザイン同士の掛け算

によって成立している事がほとんどです。
これが、真っ先に王道となるデザインを検証しておくべき第二の理由です。

というわけで、アイデアをふくらませるたたき台としても、最終的に作ったデザインの超えるべき目標水準としても、デザインがまとまりきらなくなった逃げ道としても、「絶対に一定の評価を得られるであろう定番デザイン」を設定しておくことは、大きな意味があるということです。

2-3 デザイン案の展開

次のフェーズでは、ここまでの一連の作業で生まれた複数の平凡な案を、どのように調整・統合・まとめ上げていくのか、という点が鍵となります。

筆者がいつも行っている最も定番の手法は、勝手に「きせかえ人形」と読んでいるデザインカンプの作成です。
これは、各立ち絵のデザイン要素を「髪型」「表情」「アウター」「インナー」「ボトムス」「靴」などの形で別レイヤーに分けておき、それぞれをぐちゃぐちゃに混ぜ合わせる形で新しいキャラデザを作り出すという方法です。

例えば前述のElectric dusk様の事例を振り返ってみましょう。

上記のとおり「定番」なデザイン要素を書き出していったあと、
それらを下記のように複数混ぜ合わせる形で、より複雑性の高いキャラクターデザインを行う事ができます。

身にまとっている個々のパーツは平凡なものばかりかと思いますが、組み合わせによって大きく印象が異なっているのではないでしょうか?
それでいて、いずれのデザインも絶妙に「DJっぽさ」と「レーシング要素っぽさ」を持つ、「定番なのに新しい」という印象のデザインを、ある程度実現できているかと思います。

以上のように、

  1. クライアントが求める要素を、一つ一つリストアップする
  2. 1.で整理した要素一つ一つを、そのまま素直に表現したデザイン案を個別に作っていく
  3. 2.で作った複数の案を着せ替え人形的に組み合わせることで、顧客の要望と世間の定番を両立した、基準となるデザインをまとめ上げる

という3つの流れをたどることができれば、「キャラクターデザインがまとまらない!」という課題の解決に、大きな道筋を示すことができるのではないでしょうか?

ちなみにスケジュール感としては、ご依頼着手から最初の1週間程度で、この「王道」と「らしさ」をハイブリッドした案を作成するように心がけています。
その後、提出したハイブリッド案をベースに他の可能性や初回のオリエンテーションでは聞き出し切れなかった活動方針をお伺いしていきながら、さらに2週間~4週間程度期間をかけてデザインの方向性を検証していく形となります。

その後、キャラクターの方針や方向性がまとまった段階で、次に説明するのディティールや細かい雰囲気の調整へとプロジェクトを進めることになります。

STEP3 コンセプト開発&デザイン案決定

3-1 デザイン提案

STEP2で作成した複数のスケッチやデザインをプレゼン資料としてまとめ、率直な印象や感想を聞きつつよりヒアリングを深めていきます。
下記が、その時のプレゼン資料です。

一番最初のラフ提案の打ち合わせでは、基本的に「これしか無い!」という渾身のデザイン案をお見せするというよりも、

  • 「自分の考えとクリエイターの理解の間に、ズレがないかを確認する」
  • 「クライアント自身も言語化できていなかった自分の要望を、具体的な立ち絵を見ながら整理していく」
  • 「自分が想定もしていなかったデザイン案を見て、視野を広げる」

など、初回の打ち合わせでは見えてこなかった要望や、形にできていなかったビジュアルイメージを一つ一つ形にしていくコミュニケーションとなることを目指しています。

あと、プレゼンテーション資料の作成に当たって気をつけることとしては、下記のような点が挙げられます。

  • 最初に、クライアントの要望になるべく忠実な案を1案示す。
  • クライアントの要望を広く解釈した、少し逸脱した案も複数提案し、デザイン上の視野を広げてもらう。
  • 収集した資料やそこから得られた結論、没にしたスケッチもなるべく見せる。
  • 最終的なおすすめは、必ず一つに絞って提案する。

3-2 デザイン検証

ここからは、決定したデザインの方針にしたがって、よりディティール詰めていく考え方を紹介します。

とはいえここからの業務にもそれほど難しい点はあまりありません。
基本的には、クライアント側の
「もう少し髪の長さが長めのパターンも見てみたい」
「瞳の大きさは、もう少し大きめがいいと思う」
「複数のカラーバリエーションを比較検討したい」
などといった要望に合わせて、細かい修正・検証を加えていく形となります。

曖昧な要望(=もうすこし異なるバリエーションもほしい)を頂いたとき

ただ、場合によっては「方針としては悪くないんだけど……」というような、なんとも言えない曖昧な修正依頼をいただくケースもあったりします。

こうしたクライアント側も言語化しきれていないあやふやな不満足感が発生すると、打ち合わせは往々にして「この案も素敵なのですが、もう少し印象の異なるバリエーションもいただけますでしょうか?」といった話の流れがしばし発生します。
こういった「大まかな方針は固定したまま、印象の異なるバリエーション」を強制的に生み出すためのノウハウとして、

  • ドレスとカジュアル
  • 日常性と非日常性

という2つの軸がありますので、紹介します。

ドレスとカジュアル

ドレスとカジュアルはファッション業界における一つの基本的な評価軸です。
筆者はデザインのバリエーションを無理やり考えるとき、
「今のデザインを、もっとドレッシーにorカジュアルにしたらどうなるだろう?」
という風に考えます。

ドレス・ドレスライク・ドレッシーとは、「きちんとした」衣装の意味ですが

  • 色はモノトーンもしくは低彩度。
  • 柄や装飾は少なめでシンプルに
  • シワは少なめ、シルエットはより単純に
  • その他、スーツやドレスと言った礼服、あるいは王侯貴族・軍人の衣服をモチーフとした要素

といったデザイン要素によって構成されています。
これらの要素をキャラクターデザインに盛り込んでいくことにより、キャラクターの印象はおしゃれ・都会的・大人っぽい印象に近づいていきます。

逆に、上記の要素とは真逆である

  • ビビッドで豊かな色使い
  • 特定の国や地域・民族に由来する装飾やモチーフを取り入れる
  • 質感や表情のある素材を多様し、シルエットにも変化をもたせる

を取り入れることにより、よりカジュアル・POP・活動的・破壊的な印象を与えるデザインとなります。

キャラデザで言えば、配色全体の彩度を少し落とし、襟や裾のデザインを少しスーツや軍服っぽく変更するだけで、全体的におしゃれっぽい印象へとコントロールすることができます。

日常性と非日常性

この概念を表現するうまい日本語が思いついていないのですが、

  • 日常:ユニクロ的な普段着や、職業人・労働者の制服・仕事着など、機能性を重視した日常と密着している衣装など
  • 準日常:タレントやモデルが来ているような、特徴的で目立つ派手な私服など
  • 非日常:ミュージカルの舞台衣装やパリコレのモードファッション、宗教的な儀式服のような、機能性を失い過剰に特徴を強調したファッションなど

のようなものをイメージしていただければと思います。
非日常的なキャラデザの最高峰は、ジョジョの奇妙な冒険のキャラクターやスタンドのデザインをイメージしてもらえればいいと思います。

個人Vtuberのキャラデザは、上記で言えば「準日常」~「非日常」くらいの衣装が多いイメージですね。

衣装の中の一部のパーツを極端に大きくしたり、必要以上に大量に見に付けさせたり、本来の機能を失うようなトリッキーな形で付与していく事により、より奇抜でポップなキャラクター造形となっていきます。

逆に、ポケットやファスナーやベルトといった機能性のあるパーツを
「このポケットにはこういったものを収納するんだろうな」
「激しく運動するときは、このベルトを締めるんだろうな」
といった形で、リアルな使用方法や活用風景を想像させるようなリアリティのあるキャラデザを行うと、堅実で深みのある渋いキャラクターデザインに寄せることができるでしょう。

「ジャストアイデア」や「小手先のテクニック」は最後のトッピング

Vtuberのキャラデザをやる上で、「キャラクターを見た人々の印象に残る工夫」や「エスプリの効いたデザイン上のちょっとしたアイデア」などの存在は欠かせません。

こういった「デザイン上の一工夫」ともいうべきちょっとしたトッピングの提案や「視聴者にインパクトを与えるビジュアル」の提案については、ある程度キャラクターの方針が固まったこの段階で、STEP4と同時に検証していくことが多いです。

またもElectric dusk様の事例を見てみましょう。

左がある程度キャラデザの方針がかたまりつつあり、立ち絵の清書に入る少し前という段階です。

これに対し最終案である右のデザインでは、

  • サーキットコースのようにも天使の羽のようにも見える、特徴的な振る舞いをするオーディオケーブル
  • ハイウェイやジャンクションを意識した、腰のベルト
  • オーディオスペクトラムをモチーフとした、ヘッドホンや靴の装飾

など+αのモチーフを盛り込んでおり、キャラクターを特徴づけるインパクトのある要素が追加されています。

ここで重要なのは、「人々の記憶に残るデザイン上のアイデアは、デザイン制作の終盤に考えたほうがいい」という点です。
この手の面白みのあるデザインアイデアは目立つため、ともすればデザインの最初期に考え込んでしまいがちです。
しかし、こういったジャストアイデアをデザイン作業の序盤で考える行為は、

  • アイデア待ちやひらめき待ちになってしまい、作業の進捗をコントロールできない
  • 思いついたアイデアに固執してしまい、キャラクターのデザイン方針がぶれてしまいがち

などのデメリットがあることから、キャラデザの初期に考えてしまったり、キャラデザの軸として据えることはあまりおすすめできないのです。

また、Vtuberで言えば「揺れものを多めにする」「補色を意識した差し色を使う。」「顔周りに視線を誘導する」などの小手先的なキャラデザのブラッシュアップテクニック についても、「あとはディティールを加筆するだけ」というタイミングで意識するようにしています

STEP4 三面図・立ち絵の作成

STEP2とSTEP3を交互に繰り返しながらデザインの検証を進めていき、最終的なデザインが確定した段階で、立ち絵や三面図の作成へと移ります。

立ち絵と三面図のどちらを先にするかについてはクライアント様によって代わり、特に「モデリング・キービジュアル・配信素材などを別なクリエイター様に依頼する」という分業体制でのデビューの場合は、三面図の作成が優先される場合も多いです。

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